今年おそらく最後の入荷となるWeberが届いた。このコラムで取り上げるのも2回目となるが、いかにゾッコンかがお解かりいただけると思う。ま、とにかく「現存する最高のパツラ」といった方が早いかもしれない!
 ウチも過去にいろんなメーカーのトランペットを扱ってきた。Marcinkiewictz,Alpha,Scodwell,K.Hill,そしてRoy Lawler。その全ては確かに凄いのを提供してくれたが、残念ながらそのクオリティが劣化していくのとオーダー本数が増えるのが比例していたのもはっきりいって事実である。Royも結婚以降守りに入り(?)、オキマリのラインナップ以外の特注を嫌がるようになり事実上先日の2本がカスタムメイドの最後となりそうだ。ようするにモデルを絞り込めばパーツも共通だしライン生産が可能となるからで、これはBach,Shilkeなどの大工場製も同じ轍を踏んできたのはご承知のとおりだ。こうなってくると一本一本は文字通り「商品」となるわけで、言い換えれば「金」がパツラの格好をしてるだけで、日間ないし月間生産本数が全てとなる。ここに現在の「パツラ工業製品化」現象が顕著にみられる訳だ。

 

 すると必然的に我々としてはヴィンテージの本当にイイものの素晴らしさに目がいってしまう訳だが、正直なところこちらとしてもいまだに数十年前のパツラのミントないイキのいいのを探し出して調整して販売するなんて手間のかかることを本来はやりたくない。大体21世紀の今の段階で新品のパツラがそれらヴィンテージものを凌駕できないなんて、何の為のテクノロジーの進化なのかわからない!国内の某メーカーなど昔の名機を金属成分から分析してその組成どおりにパツラをつくる、なんて訳のわからないことをやってるがそこまでやってあの程度とは腰が抜けそうになる。
 そんなことより真の意味の「職人気質」をもって「こだわりのモノづくり」をやることがいかに大事かをもう一度考え直す事の方がずっと近道だと思うんだけどね。その手の職人は40年代50年代のアメリカやヨーロッパにはいっぱい居た。あのバックだってニューヨーク時代は職人AさんとBさんでは全く違うパツラがつくられてた訳で、「あの野郎に負けてたまるか!」の根性があの黄金時代を支えていたのだ。彼らにとっての一台一台はまさに「作品」であったのだ。決して流れ作業のなかでパートのおばちゃんが息子の話とかしながら分化された一部門だけをノルマどおりにこなしてるというそんな状況下で作られてはいなかったのだ!ひとりの職人が全工程をひとりで作り上げてこそ「作品」は生まれる。モノづくりにこだわりが無くなったらもうそれは「作品」ではなく「製品」になってしまう。

 

 そんな意味でもこのWeberはこちらのこだわりを更なるこだわりで返してくれる数少ない「職人」の作った「作品」である。前回よりこうしたいといった要望が確実に反映されてくるし、しかも手抜きなどとは全く無縁の完璧なツクリをキープし続けている。これはまさに脅威である。
 ウチもこんな「職人気質」を持ち続けている真の「職人」の手になる「作品」を今後も常に探し続けて紹介していこうと思う。ハッタリじゃない本当の「モノづくり」のできるブランドをね!