前回は詳しく紹介する前にSOLDとなってしまったので今回はじっくりWeber Trumpetのスグレドコロをお見せしたい。



 先ず全体のデザイン。モネの流れを汲んではいるが遥かに洗練されたデザインで、変なウンチクの神話づくりの無い分よりシンプルな構造である。よくこのオモリが、このチューブの曲がりが、このヒレが、等とさもサウンドに絶大な影響が在るかのごとく言われるがその真偽はさておき、それにまんまと乗せられてしまうアマチュアが後を絶たない。結局奏法すらも崩してしまうハメに陥っているケースが非常に多く、結果、中古の残骸が巷にあふれる始末。楽器が吹き手を選ぶより吹き手が楽器を選ぶべきはずなのだが・・・。ともあれこのWeberは意外に軽量につくられ、しかも各音のスポットが凄く明確で非常に吹きやすい。テレンスやニコの例を出すまでも無く、やはり桁外れのウエイトは奏者に相当な負担を強いる事となる。カルトの修行じゃないのだから苦しみながら演奏する必要はないはず。その意味からもWeberの吹きやすさは自分のサウンド作りに専念できる「道具」としての価値、奏者主体のスタンスが非常に評価できる。



  次は、リードパイプが交換できる点。なんと8種類ものラインナップがある。このモデルにはもっともスタンダードなタイプが付属しているが、後からパイプだけ発注しカスタマイズする事ができる。ご存知の通りリードパイプによってサウンド、吹奏感は激変する。ここにもあくまで奏者側に立っての楽器作りの姿勢がみてとれる。しかもこの部分は二重構造となっている為に音の入り口での振動を逃がしてしまう事が無く、しかも中のリードパイプはまるで注射器の様にタイトにフィットする為、共振の心配は全く無い。



 そして各種ブレイスやピストン周りの仕上げの良さも特筆する点だ。ピストンのタッチはラッピングとエージングに相当な時間をかけているらしく信じられなくスムースである。しかも非常に機密性が高く、奏者のエアーが100%ベル・エンドへと導かれていく。どこかのブランドの様に新品状態でもメイン管の接合部から泡がブクブク出てくる事は無い!?
とにかく正直このWeberには参ってしまった。ここまで丁寧なモノづくりがなされて、しかもデザイン面からも洗練されたこの製作家がいる限り、「最近の楽器は・・・」といったボヤキや嘆きを聞かなくても済む気がする。