今年も色々お世話になりました。てな訳で今年最後のコラム。
最近、安易にピストンを新品状態から削ってしまう無謀な輩が多いので、今回はその注意点について話しておこう。
ピストンに上バネと下バネの2種類があるのはご存知のとおりだけど、そもそもピストンの形状がその2つで微妙に違うというのはあまり知られてないんじゃないだろうか。前者はタル型、後者は鼓型。要するに前者は2点のヴァルブ・ガイドと体でいうとピストンの腰の部分でケーシングに接する形になり、後者は肩と足の部分で接する、という訳。ここが昔の楽器作りの凄いところなんだけど、じゃあ精密機械のように完全にまっすぐな機密性完璧のピストンにしたらどうなんだってーとこれがエライことなんだわ。そこまでの精密性はそれを押す側にも要求されてしまう訳。つまり完璧な鉛直方向に常に力を加えてないといけないから世のほとんどんのパツラ吹きはアウトとなってしまう。そこでやはり前述のような形状が最適となるのだが、残念ながらそれを知らないリペアマンも多い。そこで買ったばかりの楽器を、必ずエージング期間が必要であるにも関わらずそれが我慢できずに修理にだしてしまう。するとキャリアの少ないリペア・マンは大体まっすぐに削り落としてしまうから、出来上がった当面は凄く調子がよくタッチも軽くなるが、やがてその人の押し癖にあわせて削れてくるともうハフハフ、ガバガバ状態!結局、再メッキ以外に道はなくなる。巷にはびこるルイフーのペットやゲルホはほとんどこの状態でさらしモノになってるんだから、買うときはこのへんを理解しておかないとね。
世の中なんでも今結果が出ないといけない状況だけど、こと音楽にかぎってはゆっくり、じっくり自分の楽器を育てて欲しい。毎日ピストンを洗浄しつつ、しっかりと自分の癖を覚えこませてやれば半年もすればホントの意味の「カスタム・メイド」な楽器が完成する訳で、それくらいの苦労はかけてやらなきゃいけないと思うよ。だって自分の相棒なんだからさ!