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Raw Brass Finishの手入れって非常に面倒臭いと思っている方も多いでしょうが、このTaylor OVALの画像を見ると俄然やる気が出てきませんか??まるで人間の皮膚の様な感触と鈍い光沢。それが光によって、マジョーラの様に色合いが変化して独特の風合いへと変化していくのです!ここまで来ればあとはトップコートにクリアを吹いた様な透明な被膜が徐々に出来上がってくるのを待つだけ。そうなればもうこちらのもの!?酸に対する保護機能はなまじのプレートやラッカーの比ではない位です。音も何となく「濡れた」感じに変化して、落ち着いた響きに変わってきます。

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こんな魅力的な仕上げがRaw Brass Finishなんですが、それにしてもこのOVAL、曲線の滑らかさとその仕上がりで、実になんとも艶かしい外観に育ってると思いませんか?音も響きもそんな外観そのままです!ゾクッとするほどまさにHuman Voiceの艶かしさそのものなんですよ、ホント!

さてそんなTaylorとは対照的な位置にあるのがSpencer Trumpetなのですが、コラムで発表以来非常に多くのお問い合わせを頂戴し有難う御座います。特に今回はクラシックやブラスの方々からもメールを多く頂き、嬉しい限りです!やはり日本ではこのTraditionalなカタチの方が馴染みがあるからなんでしょうか「BachやSchikeに比べてどうですか?」というお問い合わせが非常に多いのです。

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製作者のWill Spencer氏は以前お伝えした通りBachを知り尽くしている存在です。それは「何年に工場が〜」といった「歴史」などの「雑学」でなくて、演奏者として長年使用してきた中で、楽器としてのの長所も欠点も「実感」として体に染み込んでいるという事なんです。特にMt.Vernon期に関するそれは、半端なものではありません!「〜番台の1番ピストンのバンクはこう作用するからこう音に出るんだ」とか「映画の仕事は引き出しが多くないと対応できなけど、このXX番のベルなら大丈夫」とか、その辺の「隠居ペディア」が束になっても到底敵わないものです。しかもそれらが完全な「真実」であり「本音」であるのが貴重なんです。

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そんな彼と何故か意気投合!同じ世代の空気を吸ってきた「ラッパ馬鹿」同志、同じ様な問題点を感じていただけに、話がメチャクチャ早いんです。それに彼が製作するにあたって、そのパーツを一つのメーカーに限っていないのも嬉しいところ。現に今打ち合わせ中のサウンドには、「Bach #65 Light WeightのGBが合うけど、それにはSterling Silverを合わせてエッジを持たせればブヨブヨしないよ」「このヴァルブを一度つかってみようか」という調子なんです!今後はBurbank Bengeの#3ベルや20年ほど前のBauerfeindのデッドストック等を送っていろんな可能性を試してみたいと考えています。

とにもかくにも実際に演奏の場で使ってみて微調整を重ねながら作っていく彼の姿勢には感服します。しかもその製作技術は、某国の「作りが素晴らしい」とされるメーカーのそれをも超える程の仕上がりで、各抜き差し管の「Tight過ぎずLoose過ぎず」のまさにJUSTな動きや、ピストンの悦楽亭なタッチ、管内部のピッカピッカの仕上げ、などを見ればお判り頂けると思います。

TaylorとSpencer、格好の好対照であり、最高のCraftsmanである二人、今後の英国の底力にご期待ください!