今回はMonette。シカゴ時代にシルキーの工房の裏でシコシコとDEGのベルを削ってた頃のStandardモデル。



現在はすっかりカルト化しちゃって、自分でつくった伝説に飲み込まれてしまってる状態だけれど、この時期はまだ真摯にパツラ作りに専念してた頃だけに正気のツクリだ。今でもこのクオリティーを保っていてくれればとつくづく痛感する。決して今の様に「製品」としての仕上がりはキレイじゃあないけど、余分な装飾もウサンクササも無い純粋なパツラ作りへの情熱が随所に見られる。ベルのバウ部やリードパイプのゴツゴツした感じとか、いいパツラを作ってやろうとする彼の製作時の光景が浮かんでくる。サウンドも実に厚みがあってしかもパツラ本来のブリリアンスを保っている。それに今回のは非常にコンディションが良い、というか買ったはいいけどほとんど吹いていない状態な訳。「シカゴ時代のモネ・スタンダード」というので買ったはいいが・・・。というのがこのオーナーの手放す理由。これは間違いなく非常に完成度の高い楽器なのだが、悲しいかなこのオーナーの奏法と好みのサウンドには合致しなかったという次第。



最近こういうのって非常に多くって、吹きもしないで買ってしまったり、ブランドだけで自分に合いもしないのを価格だけで!なんて人の悲劇が結構多い。いつも言ってるけど自分の伴侶を吹きもしないで決めるなんてあり得ないはず。もちろん常連でその人の吹き方も好みも把握できてる場合は別だけど、いきなり価格だけ訊いて来て、なんてのはどうかと思うよ。自分の場合は学生の頃バックが気になったらエルクハートまで行ったりしたけど、そこまでとは言わず少なくとも近県なら来て吹いて決めればいいと思うけどねえ。だって自分の伴侶でしょ。ダメなら売ればいい、なんてEasyな考えは結局パツラへの考え方自体も、ひいてはその人のプレイ自体もEasyなんだと思う。まあ、それがその人の生き様だからしょうがないけどね。でも問題なのはこういった無責任なオーナーの犠牲になる人も少なくないという点。少し前にも、ウチがパツラのシャンクでフリューゲルとパツラのコンパチものを試作してもらった数年前のプロトがリードパイプをフリューゲルのものに交換されてフリューゲルとして売られてた、と常連氏が教えてくれた。「そんなの吹けば一発でイントネーションが変だと気付くはずだけど、売り手も買い手もわからないのかねえ・・・」とはまさにその通りだと思うよ!第一ウチのうかがい知らぬ所での件に関しては責任持てないからね。



「他人がなんと言ったってオレはこの音がいいんだ!」っていう自分の理想とするサウンドを見つけること!最近これすら無い人が非常に多い。で、頼るのは「〜モデル」とか、怪しい「選定書付き」なんてシロモノ。てめえのパンツくらい自分で探せや!その上でその理想の音に最も近くてストレスを感じさせない楽器を選べばいい、とたったこれだけの事なんだけどねえ。